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哀しき野生
春の訪れの遅い安曇野。その中でも特に寒い我が家に、まわりの家々より1ヶ月近く遅れてやってきた春の使者。
もともと別荘仕様だった我が家は、昨年までは誰も常住していなかったこともあって、ツバメがやってきても巣を作らせないように玄関先に網を張り巡らせていた。
それを知ってか、網を張らなくなった今年も、ツバメがここに巣をかけることはなかなかなかったのだが、5月20日になってなんだかドアの上に小さな巣が作られつつあるのに気づく。そして翌日にはかわいい居候の夫婦が僕の一時の家族となった。

ツバメの巣はその家の繁栄の証しとよく言われる。ここ数年非常に運気の低迷していた僕も、ようやく運が向いてきたのだと嬉しい気持ちになり、この夫婦と生まれ来る新しい命をやさしく見守っていこうと思うのはごく自然な流れで、毎日この夫婦の姿を見るのが楽しみだった。

ずっと都会に暮らしてきた僕は、ツバメがどんな姿をしているかはよく知らなかった。だいたいが飛んでいる姿しかわからず、本当に彼らがツバメなのか半信半疑だったけれど、飛び姿のスマートな印象とは違ってなんとなくファニーフェイスなところに大いに親しみをもつ。ほんと、かわいい顔をしてるじゃないか!

ダンナは日中はせっせと「働き」に出る。嫁さんはひとりで家を守る姿をよく見る。
そして夜、暗くなってから帰ると、ふたりは狭い巣を囲むように仲睦まじく頬を寄せ合っている。きっと巣の中にはいくつかの卵がある。嫁さんはまだ冷え込む夜に、巣の上で卵を守る姿がいじらしくてたまらない。

でも、そんな平穏な日々はわずかに9日間しか続かなかった。
仕事で早朝から松本へ行った昨日、昼前に帰ってきてみたら、無惨にも玄関先に壊された巣が・・・
我が家のあたりは猛禽類が多く生息している場所でもある。月に何日かは野鳥調査の人がうちのすぐ目の前で観察を続けているような場所なのだ。
だから、天敵から身を守るべく、ツバメは人家の玄関先に巣をつくる。糞は確かにするけれど、掃除が苦になるようなものでもないし、里山に暮らす人々は彼らを暖かく見守っていく。共生。ともに生きていく。

鋭利なくちばしで引き裂かれたようなその巣の壊され方は、トンビかタカが夫婦の留守を狙ってやってきたかのようだった。散乱していた巣の陰に、小さな卵がひとつ割れていた。まだ黄味はどろどろで、雛が孵るまではまだしばらく時間がかかりそうな風情だったが、ほかの卵が残されていなかったことから、どうやら襲撃者が持ち去ったのだろう。
僕が帰ってきたのを見つけたらしい夫婦が、杏の木に止まって僕を見ている。その何かを訴えかける悲しい瞳に、小さな命を守ってあげられなかったことに僕は大きな自責の念にかられる。
本当にごめん。長い旅の途中で新しい命を育んでいるふたりのけなげさに、渡り鳥であった僕の人生を冷静に振り返り、改めて認めることができたこの9日間のやさしい時間に感謝するとともに、失われた命がまたふたりのもとに帰ってくることを心から願う。

この野生の息づいた里山の地では、このような命のドラマが絶えず繰り広げられている。肉食の猛禽類は弱い鳥を襲うのは自然の正しい営みなのだ。
僕らもその大きな自然の流れの中に身を置いて生きていくのだ。

巣と卵を失ったふたりは、それでも我が家の玄関先で昨夜も過ごしていた。旅に出ている今も、ふたりがまだこの小さな玄関先の空間で羽根を寄せ合って生きている姿がありありと目に浮かぶ。
果たして嫁さんはこの初夏にもう一度産卵するのだろうか? 我が家でもう一度新しい命を育んでくれるなら、僕は喜んでふたりに軒先を貸そう。もしふたりが今年は諦めたとしても、また来年、きっと帰ってきてくれると信じていよう。
僕はこの不安定な巣をサポートすべく、今度こそ端切れ板を壁に固定しよう。

そう、僕らは自然の懐に抱かれて、自然の一部として、ともに生きていくのだから。

※出先の不安定なネット環境で写真がアップできないので、帰宅後写真を掲載します。
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【2008/05/30 07:26】 | 想うこと | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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コメント
なぬーくさんのツバメへの思い、温かく
読ませてもらいました。

生きていること、命あること、
ただそのことが愛しくたくましく思われる
ここ最近です。

人は弱いけれども、身と心をあるかぎり
大事に楽しく思いっきり輝かせたいですね。
自然のたくましいモノ達のように。
毎日に流されそうになりますが、
一日一秒を大切に紡ぎたいなぁ。
【2008/05/31 22:46】 URL | ヒロ壱 九州より #-[ 編集] | page top↑
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